広島大学学生自治会 2020年度前半総括

2020年10月13日火曜日

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8・6ヒロシマ大行進後、原爆詩人・峠三吉の詩碑を前に

9月18日に行った総括会議において確認した、今年度前半総括の内容です。

【1】情勢

 新型コロナウイルスの感染拡大が社会情勢を大きく一変させた。感染者数は全世界で3000万人を突破し、死者数も100万人に迫った。こうした未曾有の事態のなかで、日本では直接に感染者と向き合う保健所は深夜まで少数の職員が対応する事態に追い込まれ、検査体制の不十分さが露呈、病院の病床数が十分でないことも理由として、検査数も抑制されてきた。

それから4月7日、感染状況全体も把握できないまま緊急事態宣言が行われ、本格的な自粛要請によって日常生活が制限され、その影響は経済的余裕がほとんどない中小企業と労働者階級、とりわけ非正規労働者に集中した。コロナ関連倒産は9月11日で474件に達し、休廃業・解散については、統計開始の00年以降で初めて5万件を超える見通しになっている。コロナ解雇も8月末までで5万人を突破。月1万人のペースで増加し続けていると言われており、非正規雇用を中心に実際の数はもっと多いと言われている。7月の労働力調査では前年同月比で非正規雇用の労働者が131万人も減少していた。

こうしたコロナによる影響の甚大さは、単にコロナウイルスの感染力による問題だけではなく、社会を維持するために必要とされてきた数多くの規制を撤廃し、民営化・非正規化を進めて、「儲からない」ものを切り捨てて、営利活動を最優先にする、82年の「行政の民営化」を掲げた中曽根政権以来の新自由主義政策が招いた事態だと言わざるをえない。

 保健所の数は94年に847あったところから統廃合が進められ、2020年には469にまで削減、さらには公立・公的病院は慢性的な赤字状況であるとして、厚労省は昨年、424の公立・公的病院を名指しして再編統合を進めるよう促していた。そして非正規雇用については、84年には労働人口の15%ほどだったところから4割近くにまで達した。コロナに対応する力は本来あったはずだったにも関わらず、この力は、新自由主義によって大きく損なわれてきたこと、これが明らかとなったのだ。

 しかし、労働者民衆はこの事態のなかで黙っていたわけではなかった。コロナという事態のなかでついに立ち上がり始めた。このことが大きく社会情勢を動かし始めた。

まず、自らが生きるために必死だっただけではなく、感染拡大の最前線で医療を支え、物流を支え、なんとか社会を維持してきた。自らと仲間を守るために、ビニール防護を職場で行うなど、会社側が行わない感染対策を自ら行ってきた。社会を維持するために必須の仕事、「エッセンシャルワーカー」が注目されるようになり、その低賃金のあまりの惨状、職場のコロナ対策のずさんさが問題視されるようになった。オリエンタルランドの労働争議や、医療現場でのボーナスカットに対するストライキは大きな注目を受けた。

 この生きるための必死の闘いは政治闘争へと発展。これまで政治に無関心といわれてきたところから一変、政治権力の在り方にかかわる検察庁法改悪に対して抗議の声が瞬く間に燃え広がり、法改正は阻止され、法を捻じ曲げてまで続投がもくろまれていた、黒川元検事長は辞任に追い込まれた。そして、コロナ下での生活苦に対する怒りは、当初全く政府が考えていなかった10万円の一律給付を勝ち取るまでに至った。その後の大規模な選挙買収で河井汚職問題では法務大臣が逮捕される事態となり、景気回復策として打ち出されたGoToキャンペーンに対しても怒りが噴出。こうしたなかで、何度これまでも吹き飛んでもおかしくなかったはずなのに、存続してきた安倍政権はついに崩壊した。数々の不正・腐敗の問題を残したままの辞任であり、今でも共同通信の調査では、森友・加計・桜疑惑を再調査すべきという声が、すべきでない、の倍の62%という多数である。菅の支持率の高さは過去3番目といわれつつも、安倍政治に対する怒りはいまだ収まっていない。

安倍を引き継ぐものとして登場した菅は「国民のために働く」と言いながら、「自助・共助・公助そして絆」を掲げた。自助・共助を前提とし、セーフティネットとしてのみ公助を位置付ける考え方であり、これはコロナでの生活苦に対し、当初困窮世帯にのみ支援するとしたことに批判が集まって一律10万給付になった経緯から何も学んでいないことが、就任前から明らかになった。支持率の高さは期待の高さではなく「様子見」ということでしかないだろう。菅は官僚を敵視することで問題をそらせようとしているが、労働者民衆の生活苦の問題はこれからますます積み重なって大きくなっていく問題である。ますます、官僚さえ押さえつけて新自由主義政策と改憲を推し進めようとする菅との闘いは、安倍との闘いよりもいっそう激しいものとなるであろう。

世界を見ても、アメリカではBlack Lives Matter運動が収束しないまま爆発し続け、香港でも国安法との闘いが激しい弾圧にも屈せず継続されている。労働者階級の怒りは公権力の暴力をも乗り越えはじめている。労働者民衆のやむにやまれぬ決起が事態を揺り動かす時代へますます突入していくことだろう。

【2】総括

 コロナ情勢のもとで、学生自治会としていかに大学で闘うかが問われ、この課題に挑戦してきた。

上述したようなコロナ情勢は、学生においては職場の停止や親の収入源などによってバイトや仕送りが停止していくこと、対面授業が停止していくことで、学生の孤立化、学費問題として焦点化。全国大学で学費減免運動となって爆発した。学生も黙っていない存在として立ち上がり始めた。

学生自治会はこれまで、2011年原発事故において御用学者が被曝の影響を過小評価してきたことを問題にして政治闘争を中心にして活動してきたところから、最近ではサークル規制や自転車規制問題など、学生の日常的な課題に向き合ってきた。自転車規制を進める中心的人格が文科省からの出向役員であることをはじめ、こうした日常的課題のなかに政治問題があることを訴えるスタイルに転換してきた。そこから、全国で始まった学費減免運動と結びついて、どのような方向性で運動していくかを確立することが必要だった。

学生自治会として大きく挑戦したのは、学費問題を中心とした要求書を書き上げ、提出することだった。この議論の中で「大学にのませるための要求書なのか、それとも学生を獲得するものとしての要求書なのか」「実際に対面で再開したいと思っているのか」といった重要な問題意識と向き合うなかで、学生に対する求心力を集め、その力で当局に要求を通していく方向性を確立し、授業・課外活動の再開にあたっても、トップダウンではなく学生自治・大学自治によってこそ感染対策と再開は両立できるという視点を打ち出した。この視点は、対面授業や課外活動の再開がますます焦点化する今後も重要になってくるだろう。

また、今年で被爆75周年を迎えた8・6ヒロシマの闘いにおいても、コロナを理由として全面的な集会禁圧が狙われていたことに対し、ヒロシマ大行動実行委員会とともにこの規制を打ち破って集会・デモを貫徹。被曝者を先頭とした反戦・反核の闘いとしてヒロシマの歴史をとらえ返す発表や、今年新たな試みであった戦跡めぐりでもガイドを担うなど、集会を支えた。

本来、今年の8・6はオリンピックで後景化されることが狙われており、コロナでなくても縮小がもくろまれていただろうことは想像に難くない。菅政権になっても改憲が狙われているが、ヒロシマ・ナガサキの反戦・反核の闘いを無力化しなければとても改憲は不可能である。8・6を解体し、改憲を目指すために安倍は被爆者からも直接怒りの声をぶつけられても任期中欠かさずヒロシマに訪れ、これに抗議する集会・デモに対して「86日は祈りの日」として右翼が必死でキャンペーンを張ってきたのである。右翼らしい主張の一貫性さえない、このような矮小極まる態度で、ヒロシマ大行動をやり玉にして潰せば8・6ヒロシマの闘い全体を無力化できるともくろまれているのである。実際に松井市長はこうした右翼の主張を受け入れて拡声器規制条例の制定を狙い、そこからさらに集会の全面的禁圧まで狙っていくことになった。

こうした事態は反戦・反核のヒロシマの闘いが形骸化してきてしまったことに大きな要因があるだろう。初めて首相として佐藤が広島で発言することに抗議する8・6のデモは当時大歓迎されていた。拡声器の規制など考えられもしなかった。こうしたところからの後退がある。8・6を「祈りの日」に切り縮めてしまっているのは、右翼の攻勢よりも左派運動の指導者全体の責任とすべきところ。この形骸化に対し、今年は全面的にヒロシマの歴史をとらえ返し、垣根を超えた運動を目指したからこそ、禁圧を打ち破ることができたといえるだろう。黒い雨被爆訴訟も控訴継続し、被服支廠の解体問題も再見積もりとなって新たな状況になった。拡声器規制条例の問題も、右翼側が新団体を立ち上げ、さらなるヒロシマの闘いの解体が狙われている。これに対し、通年的な大行動実行委員会の構想がはじまった。改憲のために反戦・反核のヒロシマの原点を消し去ろうと攻撃がなされている中、ヒロシマ大行動の闘いは年間を通じた挑戦としてさらに重要になってくるだろう。

学生運動全体の総括としては、全学連大会において、全国大学でのコロナ情勢下の闘いが紹介され、相互に触発される場となった。全国的な学費減免運動の高まり、課外活動再開への要望をいかに集め、全学自治へと高めていくか、全国大学での第二期自治会再建運動が提起された。それと同時に、最も攻防が激化している京大での闘いにおいても、プロボストとして大学改革の旗振り役になってきた湊長博が次の総長になることに対し、湊体制打倒の闘いに向け、昨年12月に多くの京大生が参加して、その力で弾圧職員さえ追い返した、あの感動的な処分撤回集会をはじめ、処分撤回闘争の総括が焦点となった。決定的な闘いに際して、必ず処分が問題となる。コロナ情勢のもとでいかに進めるかの課題と向き合いつつ、処分当該と団結して仲間を守る闘いと、その土台をつくる全学自治を目指す挑戦の両立という課題が鮮明となった。

【3】方針

 コロナ情勢下・菅政権下でますます深刻化していく新自由主義・改憲との対決を見据えなくてはならない。

 第一に、自らのキャンパスでの闘いをより豊かに展開していくこと、そして学生全体への攻撃としての京都大学での学生自治破壊との闘いに連帯することだ。

 そのために、全学連大会においても学生自治会とは何か、系統立てて説明し、納得させる宣伝・扇動が必要であると確認された。対面再開も部分的にはじまっていくだろうことを考えても、よりオンラインとオフラインの両面での戦略の緻密化が求められているだろう。いずれにせよまずは、自らが系統立てて学生自治会自らの在り方を十全かつ柔軟に説明できるようにならなければならない。その挑戦として、まず本日は自治会とは何か、を系統的に訴え、自らが学生自治の意義を説明できるような系統的な考えを身につけていくべきだ。まずはHPの更新から行っていく。こうした挑戦から、改めて学費減免・課外活動の本格的再開の要求へ、後期挑戦していきたい。

 京大闘争は湊体制と本格的な闘いにはいっていく。吉田寮潰しや、タテカン撤去との闘い、学生自治破壊の攻撃はますます深刻なものとなるだろう。そして何より、処分をうけても立ち上がる当該がおり、それを支える無数の学生がいることは、今の時代の希望になるべきものだ。この闘いと連帯するなかで、広大での闘いも相互に進めていける展望を切り開いていきたい。

  第二に、通年的になった反戦・反核、ヒロシマの闘いをさらに積極的に進めていくことだ。

 コロナ情勢で沈み込んだ経済状況を打開していくため、米中対立を中心とした国家間の対立が極限化してきた。米がはじめたファーウェイへの半導体輸出禁止は他国へも適用されるなど、ブロック化につながり始めた。経済的な解決はますます絶望的になり、軍事的な衝突、米の核配備やロシアの核で反撃する体制の確立などが準備され始めている。このなかで日本の反戦闘争、ヒロシマのもっている位置は大きい。通年的となるヒロシマ大行動の実行委員会に学生も積極的に参加していこう。

そして、111日には全国労働者総決起集会と改憲阻止1万人大行進が呼び掛けられている。就任前から改憲を狙っていることを公言し、「自助・共助・公助」として公共を切り捨てようとする菅を、現場からすべてを支えて闘う労働者と結びついて打倒しよう。

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